123樫木大尉の手記(10)切り込み指令 砲煙弾雨のなかで・・・ 敵の攻撃を擾乱す

五、星野見習士官は部下二名をもって本夜さらに掛保久、ウシクンダ原付近の敵情を捜索すべし。

六、井上見習士官以下三名は挺身切り込み隊となり、和宇慶付近敵兵舎を求めて攻撃、敵人員を殺傷すべし。

七、山本伍長以下三名は挺身切り込み隊となり一○一・三高地西側付近、または上原付近の敵砲、迫(撃砲)を求めて攻撃すべし。

八、第一、第三中隊より各長(下士官または兵長)以下三名の挺身切り込み隊を明二十六日派遣しうるごとく準備すべし。

九、第十一中隊より小隊長の指揮する半小隊を以って、明二十六日夜以降掛保久北側付近の敵を奇襲しうるごとく準備すべし。

 敵情捜索斥候の報告および部隊本部、隣接吉田部隊との連絡を総合した二十六日の大隊命令。

一、敵は翁長、幸地間に進入し、棚原南側谷地にも相当数、前進してきたり小橋川北方にも敵侵入せるものの如くであって、明天明以降、敵攻撃再行の算、極めて大なり。主陣地帯の戦闘にあたりては直協砲兵の協同を受くる予定。

二、部隊はますます戦闘準備を強化するとともに、切り込み隊を増派し、敵の攻撃準備をじよう(擾)乱せんとす。

三、大隊砲小隊は西北方に対する新陣地を構築、吉田部隊方向を射撃しうるごとく準備すべし。

四、連隊砲中隊は、西北方に対する火力準備を強化すべし。

五、残余の諸隊は西北方に対する配備を強化するとともに、機関銃の一部をもって、吉田部隊方向を有効に側防しうるごとく準備すべし。

六、第一第三中隊より各長以下三名(即に指示させるもの)第一機関銃および連隊砲中隊より各長(下士官)以下二名の切り込み隊を本夜潜入、敵砲、迫(撃砲)を求めて攻撃すべし。細部は別に示す。

七、第一、第二中隊に三式地雷各三十を支給す。埋設時機は第二中隊にありては本夜とし、第一中隊にありては別命す。

八、陣地はとくに地形の利用をたくみにし敵方に秘匿擁護せらるるごとく占領すべし。

 二十六日夕刻得た敵の情況では―

掛保久付近の吉田部隊からでた前進陣地は、敵に占領され、敵の一部は小橋川北側台地に侵入せりと。

二十七日八時ころ、小波津上空に大編隊が襲来、急降下攻撃をはじめた。砲撃音がすさまじい。小波津付近の一帯は砲煙弾雨につつまれ、なにも見えない。大山隊から連絡がはいった。ただちに部隊命令を発す。(二十七日十時)

一、第二中隊は戦車四台をともなう敵と交戦中なり。吉田部隊は、翁長南側高地および幸地付近において戦闘中のもののごとく熾烈なる銃声を聞く。我謝付近においても、時おり銃声あり。

二、部隊は敵を陣前に破摧せんとす。

三、各隊は予定の計画にもとづき戦闘を開始すべし。

四、第二中隊は有力なる一部火力をもって、吉田部隊正面を側防すべし。

(樫木さんの手記は、まだつづくが、一応、十回でとめ、以下は次回にまわす)

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