201-267 206寺田兵長 ソ撃弾うけて即死 突然水捜しに出かけ 菖蒲伍長ら四人は、二日間、このゴウにいた。情報がはいり、まえにいた野戦重砲の陣地には敵が進入し、陣地をつくっている―という。すぐ、陣地移動の命令。動けない者は、真壁の大きなゴウへ移した。歩ける者は夜になるのを待ち、宇江城のゴウへ移動した。ゴ... 2024.05.31 201-267
201-267 205白骨の行列 一瞬、立ちつくす 道路の両側にびっしり 菖蒲(あやめ)正美さん(三石郡三石町○〇)は、平野大隊の指揮班所属の伍長だったが、同大隊が六月十七日まで活躍できたのは兵器係酒井伍長(函館に生存)の勇敢沈着な活動によるものである―とのべている。 五月二十八日、日本軍司令部は豪雨のなかを首... 2024.05.31 201-267
201-267 204部隊長と大隊長 残りの「カンパン」 負傷の下士官の胸に 田中曹長は、全力をつくして穴からはいあがった。身うごきできないほどの疲れ―足音を耳にしたのは、しばらくたって、疲労が回復してからだった。 よく見えないが日本兵らしい―と直感し、声をかけた。相手は独立速射砲の監視兵であった。曹長は歩兵二十二... 2024.05.31 201-267
201-267 203あるく 上半身は傷だらけ 一本のツエがたより 田中曹長は、ゴウの入り口から外へ二メートルほどはいでた。そこから四メートルほど行けば、山頂の敵軍からは死角になっていた。 救援の通信隊員らは、すでに五十メートルほども先行していた。突然、身辺で手りゆう弾サク裂。曹長は腰から左腹部にかけて被... 2024.05.31 201-267
201-267 202田川大隊長 馬のり攻撃に苦戦 最後の一兵まで失う 〈各中隊や配属をうけた工兵機関銃中隊に、もう生存者はいないだろうか?〉 田中曹長は、それらを弁ガ岳の部隊本部に後退させ平野少佐の指揮にいれる責任を感じた。敵の攻撃をうけ、負傷しながらも各陣地をたしかめて歩いた。 回り歩いて、大隊本部のご... 2024.05.31 201-267
201-267 201死ぬなよ きっと本部へ戻れ・・・ 顔は血と土にまみれる 〈大隊長も苦しそうだが、俺も、こんな苦しいめにはあったことがない。いままでで一番くるしい・・・〉 田中曹長は、目の前が、だんだんくらくなってゆくのを感じた。遂になにも見えなくなった。吸いこむ空気が、煙筒からの煙か、炎のように熱い。 入り... 2024.05.31 201-267