201-267

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236火の中 回りを包む赤い炎 水含ませた毛布で防ぐ

つぎの瞬間、サッと、真っ赤な炎が全身をつつんだ。〈火炎放射だッ!〉 佐藤上等兵は、奥へ駆けこみ絶叫した。「火炎放射だッ!毛布をはれッ!水にぬらしてはれッ!」 高安、中平一等兵らが、大急ぎで床にひいてあるぬれ毛布を何枚も地面の水たまりにつけ、...
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235カンパン 五、六粒ずつ配給 雑談し、ゆっくり味わう

佐藤武夫上等兵(釧路市〇〇)は、戦況報告のためゴウへおりた。ちようどカンパンの配給をするという。めずらしいことだ。上等兵は陣地の兵隊を、ゴウ内へいれ、ひとり五、六つぶずつ割りあてた。兵隊は、ひとかけらも落とすまいと、ゆっくり味わいながらたべ...
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234戦場の夢 湯気のたったみそ汁 食べる寸前目がさめる

工藤中隊長は、切り込み隊の四人からひとりずつ報告をうけ〝ごくろうであった〟と礼をいった。 佐藤上等兵は気持ちがすっきりしなかった。〈切り込みの場所が違う。兵隊がいうことをきかなかったことにもよるが・・・〉 一時間ほどして、佐藤上等兵は、中隊...
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233切り込み中止 わずか四人ではムリ 集結地で他部隊が全滅

石塚軍曹は、佐藤上等兵に〝すまなかった、すまなかった、おかげで命びろいをした・・・〟と頭をさげ、「首里方面の敵が、機銃で撃ってくるのに、おまえは、頭を出しているので、心配だったものだから怒鳴ったんだ・・・」 という。夢中で撃ちまくっていた上...
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232抜群の功 敵一個中隊を撃退 小銃と手りゅう弾で

佐藤上等兵はあわてた。〈現地入隊で射撃訓練をうけていなかったのか?・・・〉ふたりのあいだは、九メートルほどはなれていた。「軽機を投げてよこせッ!」 敵兵に気づかれないよう、低く叫けんだ。中平一等兵の投げた軽機は、その中間に落ちた。上等兵は、...
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231命令 犬死にはさせられぬ 〝陣地へ出ろ〟とはいうが

一日ごとに、第三中隊の陣地に対する敵の砲撃が激しくなった。佐藤上等兵は、命令を無視して、兵隊をゴウへいれていた。村上曹長が巡察にきた。「佐藤ッ!お前は、だれの命令で、上の陣地から兵隊をおろし、ゴウにいれているのだッ! 敵が攻撃してきたらどう...
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230米軍の戦闘方法 両軍の境に赤い布 飛行機へ位置知らせる

夜が明けてきた。小雨が降りしきっている。五、六千メートル前方の首里の山は、砲弾で赤土色にくずれ、敵兵の姿が点々と見える。平地に赤い布が帯のように敷かれている。彼我両軍の境を飛行機に知らせる米軍の標示である。 首里に対する米軍の砲撃が活発とな...
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229雨 空腹、疲労で居眠り 小やみもない雨の中で

全身に激烈なシヨック―頭から砂をあびる。強いサク裂音に耳も目もくらんだ。尻が痛い。もぎとられたような痛さ―。夢中で叫んだ。「だいじようぶかッ!」「ハーイ」 元気のいい返事。―自分の負傷が気になった。「俺の尻はあるか?」「なんともありません」...
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228同情 敵のスパイとは思えず 金を与えて逃がす

米軍は、第三中隊が守備する石峰の陣地を占領しなければ、首里に踏みこむことはできない。すでに彼等は、石峰の右側の部落を占領し、目的地に迫っていた。 その夜、歩哨(しよう)の高安一等兵が〝まえの穴に、三十四、五歳の女性がいる〟と知らせてきた。 ...
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227ムシのしらせ 土砂、坑木の下敷き 予感、ぴったり当たる

石峰に到着した佐藤上等兵は中村軍曹、美馬上等兵と小隊員のはいるゴウをさがした。 すぐ、がんじようなゴウをみつけた。三人はなかへはいった。ひろびろとしていて奥も深い。だが、地面に水がたまっていて腰をおろせない。―小隊長はいいゴウだという。ここ...