201-267

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216自責の念 あの時手りゆう弾を 一斉脱走がウラ目に

敵は、撫養兵長らの上にいる志村大隊長らの一団を発見したらしい。小銃と迫撃砲の音がとどろく。撫養兵長は、手りゆう弾を握りしめ、敵の接近をいまか、いまかと待つ。城戸二等兵(沖縄)の切迫したささやき。「敵が、岩のうえにきていますッ!」 上をうかが...
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215敗走記 行く先、行き先で敵襲 疲労に自決する同僚

米軍の幕舎を荒らしてきたから、攻撃されるぞ―と、うわさしていたとおり、翌日敵襲をうけた。そこで、夜をまち、撫養兵長ら一行四十数人は前田部落のゴウめざして移動―水田のなかを北上し、道路わきの谷間にさしかかる。五月五日転進しようとして攻撃をうけ...
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214死のゴウ 手足ちぎれる死体 異臭の中むさぼる眠り

悲惨だ。あわれだ。みじめだ―しかし、感傷やもの思いにふけるひまもなく、戦死体をかたづけ、このゴウで生きぬかねばならなかった。 ムシロをさがし、死体を一カ所に集積する。作業が大変だ。死体の異臭が鼻をつき、運ぶ死体の手足がちぎれる。だれも、もの...
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213米軍司令官戦死 復しゅうか、猛攻続く ゴウ伝いに必死の移動

一分間―いや二分間ぐらいであったかもしれない。うずまく炎が消えた。ふとんから頭をだす。重油くさい煙で、ゴウ内はいっぱい。撫養兵長は、ゴウの奥へ進んだ。みんなは煙にむせび、苦しんでいた。しかし死傷者がなかったのは、さいわいだった。 かねてから...
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212火の中 包囲され、逃げ回る ゴウへ火炎の追い打ち

〈いまに迎えにくるから・・・〉 実行不可能なウソ―自分だけが生きのびようとするあがき―しかし、撫養兵長は、いくらのがれようとしても死の手に握られている自分たち四人の運命を知った。進むほどに水田は幅三十メートルほどにせばまり、両側の山上に敵兵...
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211迎えにくる 重傷兵は置き去り 動ける者がゴウを移る

山三四七五部隊第二(志村)大隊主力の二千余人は、五月四日総攻撃の時、十数人しか残っていなかった―と撫養富司さん(深川市納内町)は書いている。 大隊が死守する前田部落の一四六高地は、米軍に完全に包囲され、ゴウの入り口から爆雷を投げこまれる。こ...
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210小銃・女学生 使用不能の銃に泣く 海で自決した乙女たち

日本軍の飛行機は、事故続出で、飛行士の命を失うし、小銃の性能もよくなかった。その小銃をもって、一日五十発以上を約一カ月間(一千五百発以上)特に四月二十四日から五月二日までは、少なくとも一日百発以上を撃ちつづけたから、二千発は撃った。暗いゴウ...
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209無名戦士 要領読まれた攻撃 将校の無策に散る

暁兵団から五十人、三十人とたびたび救援がやってきたが、その指揮官たちも死の恐怖にかられ、任務をまっとうしなかった。 平野大隊長や川口副官は、戦場慣れしていない彼等に、戦闘にはいるまえ、何度もこまかい注意をあたえた。〈はじめ敵は、迫撃砲やロケ...
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208指揮官 自己保護むきだし 平時大名、砲火にくすむ

あやめ伍長らは、この切り込み隊に参加しなかった。手記に理由はかいてないが、武器をもたなかったし、所属を異にする部隊にまじって戦闘することに安心感がもてなかったからではなかろうか? 別の手記には、軍隊内における矛盾、不公平、不合理がのべられて...
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207黒砂糖と兵 がんばってください 銃も持たぬ兵を励ます

「ごちそうさん」 あやめ伍長は、生きかえった感動をこめ、礼をいう。「兵隊さん、腹がへっているでしよう・・・」 三人の住民―そのひとりが黒砂糖をさしだした。 伍長らは心から住民の好意に感謝し、黒砂糖をなめた。 そばの小さなゴウから母親と娘さん...