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080半田上等兵自決 無残、血まみれ 〝生きていたかったろうに〟

長浜上等兵は、興奮と緊張で全然ねむれず、夜があけた。四月三十日米軍の砲撃が始まる。きのうにまして激しい。  第二小隊長高橋少尉(函館)が村上軍曹(小樽)をつれ、各分隊を巡察している。 「なにか食べたか?」  たずねられた長浜上等兵は、元気よ...
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079白兵戦 さながら鬼のよう 米兵に武者ぶりつく

木口中隊は、前方からは迫撃砲弾、後方から艦砲弾をあび、地獄さながら。あたりには戦死体が散乱し、生きている者も、鬼のような顔で戦闘をつづけている。水さかずきのように、みんなでさいごの水をのみ、それぞれ配置についた。  第一小隊第二分隊(長・高...
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078三日のいのち 焦土にゆかしく 戦友の死体に花一輪

山三四七四部隊の第三大隊をはなれ、部隊本部直属となっていた第十一中隊(長・木口恒好中尉)は、四月二十八日、第一線の翁長、幸地陣地へ出発することになった。この軍旗中隊は、いつも各中隊のうしろにおかれ、パッとしない存在だった。  すでに戦死者十...
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077苦戦する米軍 撤退せずば死 穴にこもり援軍待つ

米軍は、浦添村の西原丘陵めざし、攻撃をはじめた。丘陵の前方にくぼ地がある。谷をひかえ、墓地のある丘の南端から嘉数の谷の上流となっており、山の稜線が東西に走っていた。西原丘陵は嘉数丘陵からみねつづきだ。そのあいだに、幅ひろい低地が横たわってお...
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076日本軍の地下陣地 米軍、進撃ならず 迷路で連絡、激しい抵抗

和宇慶高地につづくスロープを登って行った米軍は、四百五十メートルを進撃中、日本軍から一発の射撃もうけなかった。ところが、きゆう砲、機関銃陣地帯に一歩足をふみ入れるやいなや、日本軍は一斉に掃射した。前進をストップ、ただちに応戦、数時間にわたり...
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075火炎放射 日本陣地を焼く 四月十九日はじめて使用

米軍側からみた戦闘状況は―上陸した米第十軍(司令官サイモン・ボリバー・バックナー中将)のうち第六マリン師団(長・L・C・シエフアード少将指揮二万四千三百五十六人)は、沖縄本島北部山岳地帯へ進んだ。詳細は省略するが、本土からの日本軍の逆上陸を...
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074十数人の志村大隊 全弾撃ちつくす 期待のえんご砲撃もなく

五月三日。第一線に対し、昼間、重砲のえんご砲撃が行なわれるという情報が、前田一四六高地で苦戦中の志村大隊(七五部隊第二大隊)にはいった。兵隊は生気をとりもどし戦闘を中断して、いまかいまかと友軍重砲隊の砲撃を待った。重みのあるサク裂音が、一発...
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073切り込み えい光弾さく裂 不意をつき敵機関銃の猛射

米軍は、日本軍が大砲やテキ弾筒を撃つと、すぐ退却する。そのあとに、かならず発煙筒をたいてゆく。これを日本軍が深追いすると、煙幕めがけて敵の迫撃砲弾が飛んでくるし、上空で見張っている米軍機の爆撃をうける。進撃は禁物だった。  歩兵砲小隊では、...
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072装薬変合 米軍に命中せず あわてて変合を失念

山三四七五部隊第二大隊(長・志村常夫少佐)の第二歩兵砲小隊(長・日原正人中尉)は五月一日未明、谷間の水田の中を通って、第一線の前田一四六高地にむかった。照明弾があかるく、砲弾が無数に落下、前進は危険を極めた。  一四六高地は南下する米軍をふ...
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071別れの水 腹にしみる泡盛 80人中、生還は8人

五月一日。山三四七五部隊第二大隊(長・志村常夫少佐)第七中隊(長・太田中尉)に出撃命令が下命された。太田中隊は、喜屋武に近い南端の山城部落(やまぐすく)に駐とんしていた。  夜七時、中隊の第三小隊(長・佐藤准尉)の隊員一同は、ごう内に集合、...