aaokinawa

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157火 手りゅう弾を発火 マッチ代わりに使う

笑い声は、ドウクツ内にこだまし、ゾーッと冷水をかけられたような悪感。からだがすくんで動けない。〈ああ、ここにもひとり、処置しなかった負傷者がいたのか…とり残されてかわいそうに…〉 声をかけた。返事をしない。ふたたび、「おいッ!」と呼んだが、...
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156雨だれの音 死臭の中さまよう 暗やみのドウクツを

脱出は不可能―藤沢軍曹は判断した。だが、敵陣となったところの地下に、とじこもっていることも不安がつのるばかり。翌六月七日、五味伍長と連れだって、敵弾のなかにしのび出た。ふたりは、照明弾と猛射に、水田のなかをはって逃げた。夢中だった。気がつい...
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155うなされる 狂ったように叫ぶ 重傷者の処置で疲労

藤沢軍曹と五味伍長は広い三号病室に立ちつくしていた。広さが、いままでよりいっそう、広く感じられる。灯火も油がきれて消え、めっきり数がすくなくなった。岩からもれてくる雨だれが、ドウクツ内のトタンにあたり、ものすごい音でこだまする。 いま、ここ...
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154重傷者に毒 涙をのんで飲ます 命令には静かに従う

看護婦や女学生、韓国人、沖縄の招集兵が出ていったあとのドウクツに、無気味な沈黙がおとずれた。巨大な静けさである。ひろびろとした、遠い、深い静寂である。鋭敏な感覚でなくとも、そこはかとなく死のにおいがただよってくるのを感じないわけにはいかなか...
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153さようなら… 衛生兵の一部残す 看護婦らは後退

六月上旬のその日、雲一つない夕焼け空があざやかだった。新城部落の木のしげみから、突然、軽い銃声がひびいた。妙にさえた、聞きなれない銃声―たぶん、澄んだたそがれ空のせいだろうと藤沢軍曹は思った。 あたりを見回した。しーんと静まりかえっている。...
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152ここは沖縄! 函館で療養するんだ…… 脳症起こす美青年

五月中旬から衛生材料は、リバノールと包帯だけ。苦痛をひどく訴える者は、モルヒネ注射で眠らせた。食料もなくなった。親部隊の富盛野病から夜間、カマスいりの米や、箱いりのカンパンをかついで運ぶ。雑役婦たちが三カ所にすえつけた大ガマで早朝から夜おそ...
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151詩人バクさん 鎮魂歌「摩文仁の丘」 当時をしのんで作詩

むかしから沖縄の女は、じっとしているよりは、少しでもかせいで、子供に教育を仕込んでおこうとする心意気がある―という。 沖縄の人は学問好きだ。学者も出ているが、有名無名の郷土史家の多彩さがその証拠である。 昭和三十八年七月十九日なくなった沖縄...
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150沖縄の女性 機敏に動く看護婦 水浸しの洞くつで

この洞(どう)穴には、女性たち―看護婦、新城女子青年団員、県立第二高女生十五人―がいた。 みんな油煙で真っ黒。手足、顔、衣服を洗う暇がない。包帯交換、看護、食事分配、その他雑用に、不眠不休でかけ回っている。 藤沢軍曹は、よく働く、かわいらし...
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149地獄絵図 傷口にウジがわく 雨もりつづく洞穴内の野戦病院

まっくらやみ―地のそこの新城野病の洞穴内に、雨だれの音が高くピンピンひびく。大地に吸い込まれた雨水が、雨もりとなって落ちてくる。 リズムをきざんでいるようだ。手びょうしをとってるみたいだ。 雨だれの音のコンダクター。くらやみの中から悲しい、...
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148ウジと兵隊 からだ中はいまわる 重傷で、はらいのけられず

負傷兵輸送のトラックのひびきが、艦砲弾サク裂の合い間、あいまに聞こえてきた。ヨロヨロと、やみのなかに近づくのを見れば、四台が四台とも、運転台の屋根がない。機関部のカバーは破れ車体はタマのあとだらけ。 その時、上空に爆音。敵機の機影、照明弾サ...