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180イカダ 脱出計画に失敗 海岸一帯に地雷

ゴウのなかに、まだ日本兵が九人いた。彼等は、海上を突破して国頭へ行くことを決めたといい、毎夜、九人で海岸へ行き丸太でイカダをつくっていた。ある日、彼等の代表が、杢大伍長らに別れのあいさつにきた。 「いよいよ今夜、俺たちはイカダで海上の敵船の...
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179タバコ ただ、吸いたい一心 マネ事で気まぎらす

その中学生は十六歳。米軍上陸前に戦車肉薄攻撃隊員として特別訓練をうけていた。戦闘がはじまると、訓練どおりに爆雷を持たされた。命令により敵戦車が進撃してくると予想されるくぼ地で待機していた。何日も待った。しかし、敵戦車は、この中学生のそばを通...
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178脱出計画 くぼ地底にうめき声 かすかな息する中学生

「なんだ?」 「だれか走ってきますッ」  杢大伍長と島袋二等兵は顔を見合わせて緊張した。手にはしと飯ごうをにぎったままだ。兵長の階級章をつけた兵隊がフラフラしながらでてきた。疲労しきっている。 「み…水はありませんか?」  伍長は緊張をとい...
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177水 ゴウの下にわき水 危険をおかし近づく

夜になった。杢大伍長ら三人は、タコツボを出た。照明弾が明るい。 〈水が飲みたい。照明弾が照らしていても、もう、どうでもいい〉 〈水はないか…、水がのみたい…〉三人はさまよい歩く。ひあがった川のようなところへ出る。照明弾のあかりで見渡すと、一...
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176折れた軍刀 手りゅう弾の身代わり 目前の射撃に傷もなし

午前十時ころ島袋二等兵が、苦しそうに顔をゆがめ、がまんできない―といった声と様子で 「あの、用便がしたい」という。この砲弾のなか、そとにでてやるわけにはいかない。 〈いっしょに死のうとちかいあった戦友じゃないか。少々は、くさいだろうが、この...
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175摩文仁へ 照明弾で昼のよう 思うように進めず

命令には従わねばならぬ。杢大伍長は、身をさかれる思い― 〈しかたがない…〉  島袋二等兵(沖縄)をうながし、真壁のゴウを飛び出した。  右にも左にも敵兵の姿。たえまない爆発音で鼓膜はやぶけそう。死んだ気になって走った。距離は約一千五百メート...
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174一人十殺一戦車 爆雷かかえて肉薄 恐ろしさも忘れて

島尻地区へ後退した日本軍は捨て身の切り込み戦で米軍に対抗していた。米軍は陣地のまわりにかくしマイクやピアノ線をはりめぐらして警戒にあたり、これに切り込み隊員がふれると照明弾があがり、集中射撃をあびた。  ある夜、友軍機が飛来して日本軍のいる...
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173殺してくれ! 弾片をはらにうけ 苦しさに耐えかねる

〈吉田中尉は車両九両に弾薬を積載、第一線の新川(南風原村の西方)に転出すべし〉  命令をうけた中尉は杢大伍長らをつれ、午後十一時ころ八重瀬岳を出発した。トラックは九台ともドアをとりはずしてあった。  午前二時ころ新川到着。弾薬を友軍にひき渡...
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172刀カジの名人 夜襲用の日本刀を スプリング材料に作る

夜間切り込みは、各部隊共通の戦闘法だった。山三四八三部隊(輜重兵第二十四連隊・長・中村卯之助大佐)でもやっていたが、その夜襲用日本刀は自動車のスプリングを材料に、野外で戦友たちが機銃掃射で倒れるなかで作られた。  作った人は空知郡山部出身の...
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171重傷者を残す 最期までここに… 死を覚悟し動かず

五月四日の山岳団総攻撃に、山三四七七部隊は発煙の任務をもって首里前方に出動、部隊の半数が戦死し負傷した。  五月十五日、大名部落から約二十キロ前後して山三四七八部隊(捜索第二十四連隊)の指揮下にはいり、左側の陣地につく。敵は首里に通ずる道路...